健康経営は、毎年取り組みを始める企業が増えてきており、企業が注目しているものの1つです。
2021年度の健康経営優良法人認定からは、中小企業の優良法人の新冠として、「ブライト500」が新設されるなど、中小企業においても健康経営の注目度が高まっています。
今回は、中小企業が健康経営に取り組んでいくべき理由や、健康経営優良法人の中小規模部門に選ばれている企業の事例を紹介します。
中小企業こそ健康経営が必要な理由
健康経営は、中小企業こそ取り組むべき施策といえます。
その理由として挙げられるのが、中小企業の多くが抱える問題である「人材不足」です。
中小企業のかかえる問題:深刻な人材不足
日本では、少子高齢化の進行や働き方の多様化が進んでおり、社会全体で人材不足が慢性化しています。
人材不足によって、従業員1人1人の業務負担が増え労働生産性が低下してしまいます。
長時間労働・休日出勤などの過労にも繋がり、健康被害の危険も高まります。
労働基準法においても、1人当たりの労働時間が健康被害を生まないように上限が決まっているため、結果として人材不足のまま売上を維持していくことは難しくなります。
さらに、企業側においても社内教育や新規事業の創出といった、企業に必要な課題への取り組みがおろそかになりかねません。
人材不足の実情を見てみましょう。
出典:リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査(2023年卒)
リクルートワークス研究所の調べによると、企業規模が小さいほど、求人数に対して求職者が不足傾向にあり、人材不足に悩まされている状況です。
特に従業員数300人以下の中小企業は顕著にあらわれています。
人材不足は、中小企業ほど深刻なのです。
中小企業が健康経営に取り組むメリット
健康経営に企業が取り組むことで、従業員が働きやすい環境を整えることができます。
長く働きたい環境が整うことは離職率の低下にも繋がるため、人材不足に悩む中小企業はメリットが大きいといえます。
健康経営のメリットや経済効果については別の記事詳しく紹介しています。
是非あわせてご覧ください。
参考
リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査(2023年卒)
中小企業における健康経営の現状
中小企業における健康経営の位置づけは、人材不足の観点から非常に重要度が高いことは既述した通りです。
現在の中小企業における実情を紹介します。
中小企業経営者の健康経営認知度
しかし、中小企業における「健康経営」の認知度は決して高いとは言えません。
中小企業における「健康経営」認知度として、中小企業の経営者(n=9605)を対象とした大同生命のアンケート調査結果を紹介します。
健康経営の意味や内容を知っていると回答したのは全体の22%にとどまり、言葉だけは聞いたことがあると回答したのは47%、聞いたことがない・知らないと回答している中小企業の経営者は全体の31%に及んでいます。
しかし、2017年時点では、知らないと回答した経営者が約半数の48%だったことを踏まえると、健康経営の注目度が上がってきていることは事実です。
中小企業が感じている健康経営の課題
大同生命の同調査において、健康経営の課題についてのアンケート結果も紹介します。
アンケートでは、中小企業の経営者に対し、健康経営を実践する上で課題に感じていることについて質問しています。
結果は、健康とは従業員の個人情報であることから、「企業として従業員個人の健康にどの程度関与してよいかの判断だ難しい」が全体の31%にも及んでいます。
次いで、「自社にノウハウがない」が全体の22%でした。
つまり、健康経営の進め方について悩んでいる企業が半数を占めていることがわかります。
参考
中小企業の「健康経営」事例|株式会社マイシン様(愛知県)
「健康経営」という言葉が広がっていますが、実際に経営に取り組むための具体的な施策には頭を抱えているのが現状です。
健康経営優良法人の中小規模部門に選ばれている企業の中から、2021年には上位500社の称号ブライト500を手にされた愛知県の企業である株式会社マイシン様を紹介します。
設立 | 昭和54年(1979年) |
所在地 | 愛知県豊橋市 |
従業員数 | 全体181名 本社 102名 豊川営業所 37名 浜松営業所 35名 |
株式会社マイシン様は、「ひまわり便」で有名な運送業の企業です。
2020年度から健康経営優良法人の中小規模部門に認定をされています。
2021年度には新設されたブライト500にも選ばれた実績もある企業で、認定要件の選択項目である①~⑮の評価項目については15項目全てに対して取り組みを行っています。
今回は株式会社マイシン様が行っている取り組みの概要のみを紹介します。
①定期健診受診率100%
【対策内容】
・法定項目以外にも自社の現状を考慮して検査項目を拡充
・健診時は、健診車を企業に手配し、シフトを調整。
②受診推奨の取り組み
【対策内容】
・受診推奨の面談は担当者2名と本人の3名で実施。
・1度目の再受診については、一部を会社の費用補助
・再検査の実施状況の追跡
③50人未満の事業所におけるストレスチェックの実施
【対策内容】
・50人未満の営業所を含め、全事業所においてストレスチェックを実施
④管理職・従業員への教育
【対策内容】
・従業員に対して、健康をテーマにした情報提供
・月1回健康に関する広報誌を発行
・管理職に対する社外研修の実施
・とよはし健康宣言で運動プログラムへの参加
⑤適切な働き方の実現に向けた取り組み
【対策内容】
・年次有給休暇の年5日取得を義務化
・ドライバーさんのお昼休憩(60分)確認の徹底
・事務員さん向け対策として残業事前申告制度、休暇台帳兼届出書の導入
・ドライバーさん向け対策として、時間外労働時間削減、月の労働時間把握、月2回の安全衛生会議実施
⑥コミュニケーションの促進に向けた取り組み
【対策内容】
・経営方針発表会(8月)
・活力朝礼コンクール(2月)
・毎日の朝礼で1名づつの3分スピーチ
・地域清掃(5月、8月、12月)
⑦私病等に関する両立支援の取り組み
【対策内容】
・本人の状況を踏まえた働き方の策定
・必要に応じて、本人と担当医を含めた面談
・社内規定や傷病手当などの制度説明を総務部が請け負い実施
⑧保健指導の実施または特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み
【対策内容】
・産業医や協会けんぽの保健指導を活用
・指導対象者に合った方法で保健指導を実施(産業医病院に赴く・任意の場所・WEB面談)
・保健指導利用について推奨のための資料を該当者に配布
⑨食生活の改善に向けた取り組み
【対策内容】
・社内自販機の取り扱い商品改善(糖質量の多い商品を除く)
・生活習慣病予防の食生活に関して社内掲示板で情報発信
⑩運動機会の増進に向けた取り組み
【対策内容】
・健康管理アプリの導入
・希望者に、スポーツクラブ利用補助
・朝礼時のラジオ体操
・広報誌での情報発信
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座りすぎに潜む健康リスク
⑪女性の健康維持・増進に向けた取り組み
【対策内容】
・妊娠中の従業員に対する業務の配慮
・生理休暇を取得しやすい環境づくり
⑫長時間労働者への対応に関する取り組み
【対策内容】
・長時間労働が発生した場合の対策整備(詳細は公式HPへ)
▼関連記事
長時間労働に悩む企業がすべきこと|企業事例つき
⑬メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み
【対策内容】
・点呼による声替え
・相談窓口設置・周知
⑭感染症予防に関する取り組み
【対策内容】
・インフルエンザ予防接種全額負担(扶養者も一部負担)
・感染症予防環境の整備(アクリル板設置、マスク、ハンドソープ、アルコール消毒液…)
⑮喫煙率低下に向けた取り組み
【対策内容】
・禁煙外来にかかる費用の全額会社負担
・喫煙所のポスター掲示・広報誌などでの健康への影響に関する情報発信
・トラック内禁煙(違反者は乗車禁止)
取り組みの詳細については公式HPで、とても分かりやすく発信されていますので是非ご覧ください。
株式会社マイシン様公式HP 健康経営優良法人に関する取り組み
まとめ
企業の抱える問題として、人材不足が挙げられます。
人材不足の改善・予防のためは、従業員が働きやすい環境を整備する対策が必要であり、健康経営が注目されています。
しかし、人材不足が深刻化している中小企業においては、健康経営の認知度が低いことや、取り組みを始めるために悩んでいる企業も多くあります。
健康経営優良法人に選ばれている企業の取り組み事例を参考にしながら、自社に沿った健康経営のスタートを切ってみてはいかがでしょうか。
健康経営について、さらに詳しく情報を必要としている場合は、他の記事でも紹介しています。
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