健康経営という言葉が浸透しつつありますが、自社でどんな施策をすすめたらよいのかと悩んではいませんか。
健康経営と福利厚生は非常に密接しており、現在すでに導入している福利厚生が健康経営に繋がっている、という取り組みも少なくないでしょう。
「健康経営」のイメージや新たな施策のアイディアに繋がるきっかけを求めている方は是非最後までご覧ください。
●健康経営とは
●健康経営に関する福利厚生
について、他企業の実例・効果を交えながら紹介いたします。
健康経営とは
健康経営は、従業員の心身の健康増進を経営戦略として実践することを指しています。
健康経営を積極的に取り組む企業が抱える悩みは、多岐に渡ります。
例えば、
●欠勤により労働生産性が低下している
●離職率が高く採用費・教育費が高い
●医療費が多い
などです。
人材不足が慢性化すると、採用費や研修費などの負担が増えることにも繋がります。
詳しくは、健康経営のメリットデメリット|健康経営を始める企業が抱える悩みは?をご覧ください。
健康経営に関する福利厚生
健康経営に繋がる福利厚生は大きく分けて5つに分類されると考えられます。
●身体の健康管理への取り組み
●心の健康管理への取り組み
●食生活習慣を整えるための取り組み
●運動習慣を整えるための取り組み
●禁煙のための取り組み
心身の健康管理の取り組みが結果的に食習慣や運動習慣を整えるきっかけになることもあります。
それぞれ具体的に紹介していきます。
今回は、具体策として、健康経営優良法人2022(中小規模部門)※1や、健康経営銘柄2021※2より実際の事例を紹介します。
★身体の健康管理への取り組み
心身の健康管理のための取り組みは、現状把握なども含まれます。
通常年1回(深夜勤務者は年2回)の健康診断は法定福利に含まれており、実施が義務づけられています。
一方、がん検診や人間ドックは、実施が義務付けられておらず、通常は従業員の自己負担となります。
早期発見や、従業員一人一人の健康に対する自覚意識を高めるために、がん検診や人間ドック等の一部または全額を負担に取り組む企業が出ています。
効果として、健康に対する意識の向上、早期発見、予防に繋がります。
取り組み例
●健康診断実施率を上げるための周知取り組み
●がん検診、人間ドックの一部または全額負担
事例|株式会社山田商会
健康課題の内容
定期健診での有所見者が多く、生活習慣病の疾病リスクが高い
取り組み内容
●35歳以上の有所見者を対象に「生活習慣予防検診」の資金的補助
●女性特有疾患(子宮がん・乳がん)検診の資金的補助
取り組み結果(効果測定)
2020年度の有所見者47%から2021年度の有所見者は30%に改善。
※1
★心の健康管理への取り組み
心の状態を把握するために重要ものの1つがストレスチェックです。
ストレスチェックの実施は、労働者が常時50名以上の全事業所において義務となっています。
50名に満たない事業所のストレスチェック実施率向上や、ストレス度改善のため専門家との面談を積極的に取り組む企業が出ています。
従業員のストレス度軽減し、心身の不調による欠勤、求職、離職を防ぐ効果が見込めます。
取り組み例
●ストレスチェックの実施率向上
●高ストレス者に対する個別面談の実施
事例|株式会社新井精密
健康課題の内容
高ストレス者の面談措置は行っていたものの、発生予防・早期発見の取り組みが出来ていない。
取り組み内容
●高ストレス者に対しては、衛生管理者との面談後、専属産業医との面談実施
●前年度のストレスチェック結果と比較し、ストレス指数が高い従業員(高ストレス未該当者の中で)に対して衛生管理者との面談実施
●生命保険会社の24時間対応の健康相談ダイヤルを、朝礼などを通じて周知させる
取り組み後の変化
●ストレスチェック後の高ストレス者、準高ストレス者へのフォローアップ率100%達成。
●面談実施者のうち、67%は面談後のストレス改善報告あり。
※1
★食生活習慣を整えるための取り組み
食生活を整えた結果心身の健康管理に繋がっていきます。
食生活を整えるための福利厚生は、法定福利として実施を義務付けられているものではなく、各社が独自で取り入れる施策です。
そのため工夫も企業ごとに異なります。
食事代の補助や、食堂で提供する食事の質の向上、食の知識UPのためのセミナーなどに取り組む企業が見受けられます。
取り組み例
●食事代の一部負担
●提供する食事の質向上
●食の知識向上(セミナー開催、メルマガなどの情報発信)
事例|ヤフー株式会社
健康課題の内容
従業員のランチ時の脂質過多(脂肪エネルギー比率25%推奨に対して約30%の実績)および、従業員のLDLコレステロールの有所見率が約45%(2017年度時点)。
20~30代従業員の朝食欠食率が40超え。
取り組み内容
●食堂での『揚げ物税』(揚げ物料理の一部の100円値上げ)、魚料理の150円値下げ。
●朝食の無料提供(ビュッフェからおにぎり等の提供にシフト)
●夕食はグラムビュッフェ(1g〇円のビュッフェ形式、見本のバランスも掲示)
●食堂のない地方拠点では、地元事業者の協力を得て野菜たっぷりの汁物とサラダ提供。
●社員食堂担当チームには管理栄養士を含む5人を専従者として配置。
取り組み後の変化
●社員食堂での喫食率UP(朝食は1日400食から1200食、夕食は30食から400食へ)
●1日500食の唐揚げメニューが150~200食に減少、魚メニューが150食から400~500食に増加。
※3
運動習慣を整えるための取り組み
日本人を対象とした研究では、生活習慣病等および生活機能低下のリスクが有意に低くなる運動量として「息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分以上行う」とされています。※4
デスクワークが中心で日常的に運動習慣がない社員に対して運動習慣を取り入れるための施策を実践する企業があります。
スポーツイベントの開催は、運動習慣が増えると健康維持増進だけでなく、従業員同士のコミュニケーションのきっかけにも繋がります。
また、肩こり、腰痛などで悩む従業員のために運動ではなくストレッチなどのケアに力を入れることで、心身の健康管理に結び付けた運動習慣の取り組みも挙げられます。
取り組み例
●スポーツイベントの開催
●スポーツ施設利用の優待券配布、スポーツ用代の一部補助
事例|アイデアル株式会社
健康課題の内容
●睡眠の質が悪いと感じているものの割合が50%を超えており、運動不足との相関性がみられた。
取り組み内容
●歩数チャレンジ(全従業員をチーム分けし、1日平均8000歩)
取り組み後の変化
●全社達成率109%(8682歩)。実施前と比較し、4ヶ月後の健康調査結果から運動習慣の改善が見られたと回答した人は81%。
●睡眠の質が悪いと感じている人の割合は50%以上から、28.4%に減少。※1
禁煙のための取り組み
喫煙は、がんや脳卒中をはじめとするあらゆる病気と関係しています。※5
さらに、禁煙が、性別・年齢・喫煙による病気の有無を問わず、すべての人に大きくかく迅速な健康改善をもたらすと報告されています。※6
やめたいと思っていても、職場の喫煙ルームがコミュニケーションの場として成り立っているケースも少なくなく、一歩を踏み出せずにいる人もいます。
禁煙に取り組みやすい環境をつくることで喫煙者の禁煙を後押しすることにも繋がります。
禁煙外来への受診料一部負担や、禁煙アイテム(禁煙パイポ、禁煙パッチ)の購入費を一部負担、非喫煙者へ禁煙手当を支払うなどのサポートをする企業があります。
従業員の疾病予防、健康増進、職場環境改善の効果が見込めます。
事例|株式会社ワコールホールディングス
健康課題の内容
喫煙率20.4%(2015年3月)
取り組み内容
●卒煙サポートメニューの活用。自身に合った方法で禁煙に取り組め、そのサポート費用を一部負担。
具体的には、医師・保健師による面談やオンラインでの継続サポートを服薬治療とともに進めていく。
取り組み後の変化
●喫煙率12.7%(2021年3月時点)。2015年から比較し、7.7%減。
※2
まとめ
様々な福利厚生サービスが、従業員の健康維持増進、離職率の低下につながっています。
食環境の改善やスポーツイベントの結果、従業員同士のコミュニケーションの場となり、親睦を深めるなど職場環境を改善・向上に繋がることもあります。
健康に長く働ける人を増やし、企業の発展に繋げていきましょう。
参考
※1 健康経営優良法人2022(中小規模法人部門 認定法人取り組み事例集)
※2 選定企業紹介レポート 健康経営銘柄2021 経済産業省