座りすぎに潜む健康リスク

座りすぎに潜む健康リスク

●デスクワークの従業員が多い上、従業員の日ごろの運動習慣が少ない

●メタボの従業員が多い

など、従業員の運動習慣が少なくて困っていませんか。

今回は、デスクワークで座りっぱなしな従業員を抱えている企業が運動の機会を作るより前に取り組むべき「座りすぎ対策」について紹介します。

 

日本人は「世界一座りすぎ」

デスクワークのオフィス

2011年にシドニー大学が世界20か国を対象に行った平日の座位時間についての調査において、日本はもっとも最長の1日420分(7時間)という結果がでています。※1

この調査によると世界20か国の平均座位時間は300分/日。

日本人は2時間も長く座っているといえます。

自身の座位時間はいかがでしょうか。是非ともここで一旦振り返ってみてください。

参考

※1 Bauman A, Ainsworth BE, Sallis JF, Hagströmer M, Craig CL, Bull FC, Pratt M, Venugopal K, Chau J, Sjöström M; IPS Group. The descriptive epidemiology of sitting. A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire (IPAQ). Am J Prev Med. 2011 Aug;41(2):228-35.

「座りすぎ」がもたらす健康リスク

デスクワーク肩こり

「座り過ぎ」がもたらす健康に関するリスクについて報告されている事実を3つ紹介します。

●1日11時間以上座る人の総死亡リスクは、4時間未満の人と比べて40%ほど高い。
(2012年シドニー大学の研究より)※2

●1日6時間以上座る人の総死亡リスクは3時間未満の人に比べて19%ほど高い。
循環器系疾患、癌、糖尿病、腎臓病、自殺、慢性閉塞性肺疾患、嚥下性肺炎、肝臓、消化性潰瘍などの消化器系疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、神経系疾患、筋骨格系疾患などの死亡リスクを高める。
(2018年アメリカジョージア州アトランタ・米国癌協会・行動疫学研究グループの調査より)※3

●座る時間が長くなることで記憶形成に関わる脳領域の厚みは薄くなり、認知能力を低下させる危険性があり、これらの影響は強度の高い運動をしても相殺されない。
(2018年のアメリカカリフォルニア大学・ロサンゼルス校・セメル神経科学・ヒト行動研究所の研究より)※4

早稲田大学スポーツ科学学術院教授・岡浩一朗氏の研究によると、座っている時間は、足の筋肉がほとんど使われないことがわかっています。 ※5

下半身の筋肉は全身の筋肉の約70%を占めると言われています。

70%もの筋肉を使わない状態が長時間続くため、代謝が落ち、肥満や糖尿病のリスクに繋がると考えたえれています。

さらに、ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」とも呼ばれており、下半身にまで運ばれてきた血液を足より高い位置にある心臓に送るためにポンプの役割をしています。

ふくらはぎが使われない状況では、血液の巡りが悪く、酸素や栄養が滞り、高血圧の原因に繋がる危険もあります。

参考

※2 van der Ploeg HP, Chey T, Korda RJ, Banks E, Bauman A. Sitting time and all-cause mortality risk in 222 497 Australian adults. Arch Intern Med. 2012 Mar 26;172(6):494-500.

※3 Patel AV, Maliniak ML, Rees-Punia E, Matthews CE, Gapstur SM. Prolonged Leisure Time Spent Sitting in Relation to Cause-Specific Mortality in a Large US Cohort. Am J Epidemiol. 2018 Oct 1;187(10):2151-2158.

※4 Siddarth P, Burggren AC, Eyre HA, Small GW, Merrill DA. Sedentary behavior associated with reduced medial temporal lobe thickness in middle-aged and older adults. PLoS One. 2018 Apr 12;13(4):e0195549.

※5 岡浩一朗『「座りすぎ」が寿命を縮める』

 

座り過ぎ対策にできること

座って会議をする様子

「座り過ぎ」になる環境としては、デスクワークである人は特に注意が必要です。

いくつかの研究によると、30~1時間に1度立ち上がるだけでも、拾うレベルの大幅な低下、腰痛軽減、代謝改善による肥満防止・健康リスクの低減に効果があると言われています。

座り過ぎを防ぐために、どんな対策ができるでしょうか。

 

座り過ぎ対策【個人編】

まずは、自分が意識すして出来そうなことを紹介します。

・座ったままで、足を動かす動作をする。
(かかとを上げ下げ・足首をクルクル回す・足を床から浮かせて太ももに力を入れるなど。)

・デスクワークが続く場合は、トイレ休憩・水分補給の時間をこまめに確保し、立ち上がる。

 

座り過ぎ対策【企業編】

デスクワークの従業員が多い場合は、企業側が従業員の健康や、仕事パフォーマンス向上のために環境を整える必要があります。

・デスクワーカーの机をスタンディングデスクにする。

・椅子をバランスボールに変える。

・短時間の休憩時間を作り、従業員が立ち上がれる環境を整える。

 

 

まとめ

立って会議をする様子

座り過ぎによるリスクは、今や死亡リスクにまで繋がることがわかってきています。

血流をよくして健康を守るために個人で工夫できることもあります。

しかし、職場環境上立ち上がるのが難しい場合もあり、企業全体で取り組んでいく必要があるといえます。

専門家による健康情報カテゴリの最新記事