心理的安全性の高め方|職場のリーダーに求められているものとは

心理的安全性の高め方|職場のリーダーに求められているものとは

心理的安全性はチームのパフォーマンス向上のために必要であると注目を浴びている言葉です。

今回は、心理的安全性の定義や心理的安全性が低いことで発生する問題点について紹介します。

心理的安全性を高める対策にも言及していますので、

組織のパフォーマンス向上や環境整備に悩む組織のリーダー様は是非ご覧ください。

 

心理的安全性とは

心理的安全性が高い

心理的安全性とは、他者からの反応に怯えたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出せる環境のことです。

簡単に言い換えると、自分の意見を素直に言える組織風土と言えるでしょう。

心理的安全性は、英語の「サイコロジカルセーフティ」を和訳したビジネスの心理学用語の1つです。

提唱者は、米国ハーバード大学にて組織学研究をしているエイミー・C・エドモンドソン氏。

エイミー・エドモンドソン氏のは心理的安全性について、「チームの心理的安全とは、このチームでは率直に自分の意見を伝えても対人関係を悪くさせるような心配はしなくてもよいという信念が共有されている状態を意味する。」(1999)と定義しています。

 

心理的安全性の測定方法

エドモンドソン氏は心理的安全性を測定するための方法として7つの質問を上げています。

出典:エイミー・C・エドモンドソン著『恐れのない組織「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』英治出版刊, p47

◎7つの質問

1、このチームでミスをしたら、きまって咎められる。(R)
2、このチームでは、メンバーが困難や難題を提起することができる。
3、このチームの人びとは、他と違っていることを認めない。(R)
4、このチームでは、安心してリスクをとることができる。
5、このチームのメンバーには支援を求めにくい。(R)
6、このチームには、私の努力を踏みにじるような行動を故意にする人は誰もいない。
7、このチームのメンバーと仕事をするときには、私ならではのスキルと能力が高く評価され、活用されている。

◎測定方法

7つの質問に対して7段階評価をおこない、点数化49点満点で評価を行います。

集計の結果、高得点であるほど心理的安全性が高いと判断します。

集計の仕方は以下の通りです。

質問2、4、6、7については「非常にそう思う(7点)」…「全くそう思わない(1点)」

質問1、3、5(R)がついた質問については「非常にそう思う(1点)」…「全くそう思わない(7点)」

 

心理的安全性への注目が高まった背景

日本において心理的安全性の注目度がもっとも高まったのは、Google社が2012年より4年を費やして行った「プロジェクト・アリストテレス」がきっかけです。

プロジェクトの目的は、「効果的なチームの条件」を調査して定義づけることです。

社内の数百のプロジェクトチームを分析対象として研究調査が行われました。

プロジェクトの成果として、「心理的安全性の高いチームのメンバーは、離職率が低く、他のチームメンバーが発案した多様なアイディアをうまく利用でき、収益性が高く、マネジャーから評価される機会が2倍多い」ことが発表され、世界からの注目が高まりました。

 

心理的安全性が低い職場の問題点

心理的安全性が低い問題点

「心理的安全性」の産みの親であるエドモンド氏は「心理的安全性を損なう要因と特徴行動」について4つ挙げています。

 

①無知だと思われる不安(Ignorant)

分からないことがあった時に「こんなことも知らないのかと思われないか」と感じる不安のこと。

気になることへの質問や確認がしづらい職場環境に繋がります。

②無能だと思われる不安(Incompetent)

失敗や間違いの発生時に「仕事ができないと思われるのではないか」と感じる不安のこと。

このような不安が発生すると自分の失敗や弱点を認めない・失敗を報告しづらい職場環境に繋がります。

③邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)

自分の発言が「話の邪魔をしていると思われるのではないか」と感じる不安のこと。

自分の意見や提案をしなくなる職場環境に繋がります。

④ネガティブだと思われる不安(Negative)

改善の提案をしたくても「他人の意見を批判していると否定的な捉われ方をさるのではないか」と感じてできなくなる不安のこと。

現状への問題提起ができない、意見を持っていても発言でしにくい職場環境に繋がります。

 

心理的安全性を高めるメリット

イノベーションが起こる企業

心理的安全性の低さは様々な不安に繋がり、職場環境に悪影響を与えてしまいます。

心理的安全性が高まるとどのようないいことが起こるのか、個人・企業への影響をまとめてみました。

心理的安全性を高める、個人のメリット

①責任感や関心が強くなる

心理的安全性が高いと、個人の持っている意見を素直に発信できる環境が整います。

お互い尊重し合える環境にでは、積極的に仕事に貢献できていると実感できることから、責任感や関心が強まります。

より向上するための方法を考え新たな意見に繋がりやすくなるため職場においてはメリットと言えます。

 

②人と円滑に情報交換ができるようになる

不安がなく発言ができるため、情報交換が活発&円滑になります。

挑戦した結果の成功点だけでなく、失敗点、問題点等の情報も共有しやすくなります。

 

③パフォーマンスの向上

情報交換が円滑になると、人の経験も自分の経験値として蓄積できるようになります。

他の人が持っているスキルも共有できることから、結果としてチーム全体のパフォーマンス向上に繋がりやすくなっていきます。

 

心理的安全性を高める、企業のメリット

①多くの価値観や考えを持った人材が増える

心理的安全性が高い環境では、意見が言いやすいだけでなく、その多様な意見を尊重し合える環境です。

不安なく、素直に発言できる人が増えるため、より多くの考えや価値観が飛び交う活発な企業に成長できます。

 

②イノベーションが生まれやすい環境になる

多くの価値観や考えが共有されるため、今までなかった考えが発見できる可能性を秘めています。

新しいプロジェクトや改善点は、企業の成長に繋がります。

 

③人材の離職率が低くなる

自分の考えが評価してもらえる環境なので、やりがいやモチベーションに繋がります。

個人個人の成功体験が、「この企業なら自分の力を発揮できる」という確信に繋がっていきます。

仕事へのやりがいは人材の定着に繋がり、結果として離職率の低下にも繋がりやすくなります。

 

職場の心理的安全性を高める「リーダー」の役割

組織のリーダーの役割

職場で心理的安全性を高めるためにはリーダーが重要です。

組織のためにリーダーができることには何があるでしょうか。

①集団における心理的安全性への意識理解を高める

一人ひとりが心理的安全性を下げない環境をつくるために、非常に重要です。

なぜ心理的安全性を高める必要があるのか、どのような企業のビジョンなのか、目指す方向について組織全体で共有しましょう。

チームだけでなく個人に対するメリットについても説明し、取り組むための土台を整えるのはリーダーの役割です。

伝えることは、

●失敗や間違いは当たり前であり、遠慮しなくてよい事である

●失敗や間違いから新たな発想や対策を生むことができる

●4つの不安を気にすることなく素直に発言してほしい

ことを伝えましょう。

 

②積極性と素直な発言・受け入れる環境を示す

心理的安全性を高めるための土台ができたら、リーダーが真っ先に実践することが重要です。

リーダー自身も、自分にも欠点や弱さがあることを認めましょう。

●リーダー自身も分からないことは組織と共有し謙虚に頼る

実際に使える言い回し

・わかりません

・間違っていました

・申し訳ありません

・見落としていました

●失敗や間違いを組織と共有し、見落としや改善案等のアイディアが必要であることを伝え意見を求める

 

実際に使える言い回し

・教えてください

・手伝っていただきたいです

 

③素直な発言がしやすいようサポートをする

個人が発言しやすいよう、うまく促すのもリーダーの役割です。

●勇気をもって素直に発言してくれた人には敬意と感謝を伝える

実際に使える言い回し

・教えてくれてありがとうございます

・新しい視点に気づいてくれてありがとう

 

●意見が出しやすいよう質問を投げかける

「Yes」「No」でこたえられる質問ではなく、文章で回答しやすい聞き方に努めましょう。

・〇〇について、どう思っていますか。

・どんなイメージですか

・〇〇という立場なら、どんなことが考えられると思いますか。

・〇〇についてパッと思いついたことを教えてください。

※「なぜ」という聞き方は、原因の追及に詰め寄っていると感じ取られる場合があるので避けるのがbetterです。

 

さらに、失敗や間違いに対して責める姿勢は避けましょう。

●今後に活かせる改善点の意見出しや、組織全体のスキルアップ研修を組み込む

●規則違反や倫理に反する行動についての制裁措置はこれに含まないため、罰則の線引きは明確にしておく

・今日からできることはありそうですか

・〇〇についてやってみたいことはありますか

・〇〇にはどんな環境が必要だと思いますか

 

 

心理的安全性を高める「Google社」の取り組み

マネジメント

心理的安全性が効果的なチームに必要だと発表したGoogle社。

Google社が心理的安全性を高めるために実施している5つの手法を紹介します。

OKR(Objectives and Key Results)

Objective=目標、Key Result=その目標を達成するための成果指標を指します。

この2つを設定して、会社全体の目標を個人1人1人に落とし込む方法です。

会社や所属部署での役割が明確化され、会社全体の未来像もより深く理解できる集団になります。

 

1on1ミーティング

1対1面談のことです。

心理的安全性を高めるために必要な対話を増やすマネジメント方法です。

従業員個人の成長やモチベーションの向上につなげるためにから素直な意見を聞くための面談です。

Google社では2週間に1度の頻度で実施しているため、定期的におこなうとよいでしょう。

 

ピアボーナス

従業員同士で報酬を送り合える成果制度です。

従業員は毎月企業から付与されたポイントを、会社やチームに貢献した人・成果を出した人への感謝として送ります。

受け取ったポイント数に応じて現金支給をするなどして成果を形にします。

 

マネージャーへのフィードバック

通常は会社や上司など立場の上の人が組織や従業員を評価するのが一般的です。

マネージャーへのフィードバックとは、従業員からマネージャー(上司や管理職など)へのフィードバック評価を匿名で実施します。

集計結果を人事評価の資料の1つとして活用するのが目的です。

 

雑談

雑談は、信頼関係を構築するために非常に重要な対話の機会です。

日常のから従業員同士の交流を活発化させておくことは、組織のパフォーマンス向上に繋がります。

 

まとめ

心理的安全性が高い

心理的安全性とは、マイナスな不安要素を感じず、素直な意見を言い合える環境・風土のことです。

心理的安全性の高さは、効果的なチームの創造に必要な要素と言われています。

心理的安全性を高めるためには、組織のリーダーが中心となって素直に言いやすい環境をつくる、実践することが重要となります。

様々な対話を通して、企業の心理的安全性を高めていきましょう。

 

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