企業に勤めている人たちが、企業に求めているものの1つに福利厚生の充実があります。
福利厚生がない企業は損失が大きいのが実情です。
具体的にどのようなデメリットがあり、福利厚生が充実している企業はどんなメリットがあるのでしょうか。
福利厚生の種類や、福利厚生がない企業のデメリットなどを説明します。
【目次】
●福利厚生を実施している企業は約〇割
●法定福利厚生と法外福利厚生がある
●福利厚生がないデメリット
●福利厚生を充実させるメリット
●【失敗しない】福利厚生を導入するときのポイント
福利厚生を実施している企業は約〇割
企業における福利厚生施策の実態に関する調査より一部抜粋※1
そもそもどれくらいの企業が福利厚生を導入しているのでしょうか。
全国の企業のうち2809社のデータによると、福利厚生の施策があると答えた割合は「慶弔休暇制度」(90.7%)、次いで「慶弔見舞金制度」(86.5%)、「病気休職制度」(62.1%)です。
つまり、少なくとも9割の企業はなにかしらの福利厚生を実施していることがわかります。※1
法定福利厚生と法外福利厚生がある
福利厚生は、法律で定められているかどうかによって「法定福利厚生」と「法外福利厚生」の2つに分類されます。
「法定福利厚生」は法律で義務付けられている福利厚生です。
つまり福利厚生が全くない企業は法律違反となります。
先述した通り、「福利厚生を実施している企業は9割以上」との見解ですが、正しくは「法外福利厚生を実施している企業は9割以上」という意味です。
当記事で記述する福利厚生も、「法外福利厚生」について記述していきます。
その前に、法定福利厚生と法外福利厚生の概要をそれぞれ紹介いたします。
法定福利厚生
法定福利厚生は、法律で義務付けられている社会保障制度のことです。
以下の6種類が法定福利厚生に分類されます。
●健康保険
従業員や従業員の家族が病気や怪我で通院・治療となった場合の医療費・治療費を一部負担してもらう医療保険制度。
企業と従業員で折半します。
●介護保険
65歳以上で介護認定を受けた人を他起床に、介護サービス費用の一部を負担してもらう保険制度。
企業と従業員で折半します。
●厚生年金保険
国民年金保険と併せて、会社員が加入できる保険制度。
企業と従業員で折半します。
●雇用保険
会社都合や自分都合で失業・退職をし転職活動をしている場合に一部手当が給付される制度。(怪我などの療養ですぐに就職が困難な人は対象外となる)
企業が2/3、従業員が1/3を負担します。
●労災保険
通勤・就業中の怪我、業務が原因の病気に対して保険料を補償してもらえる制度。
企業負担のみで、従業員の負担はありません。
●こども・子育て拠出金
児童がいる家庭を対象に給付される拠出金。子育て支援次長の資金としても活用される年金制度。
企業負担のみで、従業員の負担はありません。
法外福利厚生
法外福利厚生とは、法定福利厚生以外で企業が任意で実施している福利厚生です。
そのため、企業の特色が色濃く現れる部分でもあります。
年々注目度が高まっている健康経営に繋がる企業を取り組みの一部を伺えることも多く、従業員や入社を希望する人からの注目度も高いと言えます。
一部を紹介します。
●住宅
住宅手当、社宅や寮、住宅ローン補助など。
●健康・医療
健康診断(法で定められている以上の詳しい検査)、人間ドック、食事補助、カウンセラーの配属、健康相談窓口の設置など。
●慶弔・災害
冠婚葬祭の祝い・見舞い金、遺族年金など。
●育児・介護
法定以上の育児・介護休暇日数、時短勤務制度、託児・保育施設の設置など。
●自己啓発
講座・セミナーの参加費補助、eラーニングや通信教育の提供・補助、図書購入費補助、研修制度など。
●業務・職場環境
食堂・カフェの設置、在宅勤務・テレワーク導入など。
●休暇
法定日数以上の有給休暇、特別休暇(月経、誕生日など)
●文化・体育・レクリエーション
部活動やサークル活動の補助、親睦会費用の補助、運動施設利用券、社員旅行など。
●財産形成
確定拠出年金、財産貯蓄制度、持株会の実施など。
福利厚生がないデメリット
企業の特色が色濃く表れる福利厚生がないことのデメリットとはなにが挙げられるでしょうか。
福利厚生がないデメリット
企業に対する評価・信頼度が下がる
先述した通り、現在では9割以上の企業が従業員のためになにかしらの福利厚生を取り入れています。
福利厚生が整っていない企業は、会社としての資質や財力に対して不信感を与えることに繋がります。
福利厚生がないデメリット
将来的な業績悪化につながる
どこの企業に勤めるかを検討するにあたって、福利厚生の内容を考慮する人も増えています。
マイナビが行った2020年卒業予定の全国大学4年および大学院2年生を対象とした調査において、入社決定の判断材料として「待遇(給与・福利厚生)に関する情報」が数年連続1位となっています。※2
さらに雇用統計調査の結果をもとにマイナビが算出した転職理由のランキングによれば、労働の時間・休日など労働条件が悪かったことが転職理由の第1位となっています。※3
これらのことから、福利厚生が充実していないと、従業員の労働環境のみならずワークライフバランスが整わないため、入職率を下げることや離職率を上げることの原因に直結します。
離職率が高まれば、求人採用費や、入社した従業員の教育費が必要ですが、費用がかさむからといって削ることはできない部分です。
新入社員が1人前として活躍できるまでには、新入社員や教育係の人の生産性が下がってしまうことも事実です。
離職の頻度が高いと長期的に生産性が下がり、業績の低迷、悪化につながる危険あります。
福利厚生を充実させるメリット
先述した福利厚生がないデメリットから、すでにいくつものメリットが思い浮かんでいるのではないでしょうか。
福利厚生を充実されることのメリットについても整理して説明いたします。
人材が集まりやすい企業になれる
福利厚生が充実した企業は、求職者からの注目度が上がるうえ、企業に対する信頼性も高まります。
福利厚生は、従業員の人生の労働時間だけでなくプライベートな時間も豊かにすることもできます。
入社を希望する人が増えるばかりか、長く務めたいと考える従業員が長く務めることができる環境も整っているため企業・従業員どちらにとっても効果的です。
生産性が上がる
離職率が下がり、従業員のスキルも高くなるため、労働生産性は高まります。
離職率が高いことで求人や新人育成に費やしていた労力や資金を生産性を上げるために活用できるようになります。
節税に繋がる
従業員のために行う施策が福利厚生費として認められた場合、「経費」として計上することが可能です。
従業員への還元の方法としては、給与もありますが、所得税が増えてしまうケースもあります。
福利厚生として還元し、労働環境を充実させることができれば、企業側としては課税対象となる所得が減るため法人税が安くなります。
従業員側としても、支払う所得税が安くなるため、企業・従業員双方にとってメリットが大きいと言えます。
【失敗しない】福利厚生を導入するときのポイント
新しい福利厚生を導入するときのポイントを2点紹介します。
社内の課題分析を念入りに
従業員の労働環境を整える・企業の抱えている課題を解決するために導入させるものが福利厚生です。
そのため、社内で抱えている問題を解決しながら、従業員や企業が必要だと感じている制度を導入していく必要があります。
導入したのに使用実績がない・つくれない制度にならないように、課題の分析は念入りに行いましょう。
費用対効果を見積もる
福利厚生を充実させたことが原因で会社の経営が苦しくなってしまっては、導入する意味がありません。
まずは費用対効果を見積もって、低コストで実施できるところから始める手段もあります。
まとめ
法定福利厚生は法律で実施が定められています。
企業の特色がでるものは、法外福利厚生と呼ばれ、企業が独自で導入するものです。
求職者、従業員は福利厚生の整った企業で働きたいと考える人も多く、福利厚生で環境整備することは、企業にも従業員にもメリットが多いと言えます。
社内の課題分析と費用対効果を見積もって、企業と従業員双方にとって幸せな福利厚生の整備をすすめませんか。
※1 企業における福利厚生施策の実態に関する調査(2018年)|独立行政法人 労働背作研究・検収機構