糖尿病患者にとって、運動は治療としても馴染みが深く重要な位置づけであることは明白です。
しかし働く世代にとって運動時間を確保することは容易ではなく、出来る限り血糖コントロールに効果的な運動のタイミングや内容については関心が高いのではないでしょうか。
血糖コントロールを良好にする運動のタイミングや強度について、様々な研究が進んでいます。
今回は、「いつどんな運動をすればいいの」への疑問の糸口になりえる血糖コントロールと運動に関する研究を紹介します。
食前に運動は、複数回に分けて「短時間高強度」で食後高血糖が改善
運動は長時間続ける方が効果的、と思っている方もいるかもしれませんが、運動強度によっては、短時間を複数回に分けて実施する方が食後高血糖を改善できるという研究結果もあります。
これは、ニュージーランドの研究チームが発表した内容で肥満者を対象に行った研究で明らかになりました。※1
- 1日1回30分間の中強度(最大心拍数の60%)の坂道ウォーキング30分
- 朝食・昼食・夕食前に1分×6セットの高強度(最大心拍数90%)の坂道ウォーキング
(最大心拍数60%の運動とは、「ちょっとキツイと感じる」程度、最大心拍数90%は全力疾走程度が該当のイメージです。)
①②は消費エネルギー量は同じものの運動強度、1回の継続時間が異なります。
①は血糖コントロールの改善が見られなかったものの、②は朝食後の食後血糖値の上昇が運動しない場合と比較して17%低下しました。
さらに、夕食後の血糖値は①の運動をした人よりも13%血糖値が低い結果でした。
1日を通して平均12%の血糖値低下は運動翌日にも若干の効果がみられました。
食前に運動をする場合は、1日3回に分けて強度の高い運動のほうが血糖コントロールに良い影響を与えてくれることが期待できると言えるでしょう。
、運動するなら食前と食後どちらが効果的?
先ほどは、運動強度や時間に関する研究ないようでしたが、運動のタイミングに関する研究もあります。
食前と食後、どちらの方が血糖値にとって良好なのでしょうか。
肥満のある2型糖尿病患者を対象におこなったアメリカのミズリー大学の研究によると、
レジスタンス運動(身体に負荷をかける筋肉トレーニング)を食前に行った場合は、まったく運動しなかったときに比べて、食後の血糖値上昇は18%減、
食後に行った場合は、まったく運動しなかった時と比べて、食後血糖値の上昇は30%減であり、食後の運動のほうが効果が高かったことがわかりました。
さらに食後に運動した場合は、血糖値のみならず、食後の中性脂肪値も抑えることが明らかになりました。※2
食後の血糖値や中性脂肪値が上昇することは心血管疾患のリスクになることがわかっており、それを食後の運動で抑えられる期待が高いといえます。
※2 運動を行う時間は食後がベスト 血糖値と中性脂肪値が低下
まとめ
食後高血糖は、心疾患リスクにつながる危険な状態です。
予防や治療で運動を頑張っても結果が出ないとモチベーションも低下し継続もできなくなってしまいます。
運動強度、持続時間、タイミングなどを工夫し効果的な運動で健康維持に励んでいきましょう。