各所で耳にするようになった「SDGs(エスディジーズ)」。
2015年の国連サミットにおいて、国際社会全体で取り組むべき「持続可能な開発目標」として、全会一致で採択されました。
2030年までの達成を目指しており、国、地方自治体のみでなく、企業、教育機関、各種団体、個人などがそれぞれの立場から取り組むことが求められます。
日本においても積極的な取り組みが地方自治体、大学や企業などで広まりつつあります。
今回は、話題のSDGsを企業が取り組むべき理由とともに解説します。
SDGsが必要になっている理由
世界共通の目標として採択されたSDGsの必要性が高まっている背景を見ていきましょう。
世界共通の社会課題に対する危機意識の高まり
今までも地球温暖化や、自然災害等、社会課題に関する警鐘が鳴らされてきていました。
しかし近年、毎年のように起こる水害、水温の上昇や北極・南極の氷の減少、といった影響から食料不足への危機や気候変動の影響などが明らかに増えてきています。
これらの危機意識の高まりによって、SDGsでの取り組み目標への関心度や重要性が認知されつつあると考えられます。
ビジネスチャンスとしての認知
国連サミットにおいて採択された「SDGs」は、世界全体が今最も求めている「需要」として捉えられています。
この需要を満たす製品やサービスを生み出す市場の大きさは計り知れず、ビジネスチャンスとして無視できないと言えます。
さらに、国連が金融業界対して、「企業に投資をする際は、財務情報だけでなく、環境や社会への責任を果たしているかどうかという『ESG』も重視すべき」と提言しました。
E=環境(Environment)
S=社会(Social)
G=統治(Governance)
このESGを評価する上で企業が行うSDGsへの取り組みが重要な指標です。
こいうった背景から、企業の事業拡大のためのビジネスチャンスとしての認知が広がってきています。
実際、SDGsへの取り組みを強みとしてアピールする企業は増えてきており、ますます市場は拡大していくでしょう。
SDGs 17の目標とは
SDGsの掲げる17の目標についてです。
①貧困をなくそう
②飢餓をゼロに
③すべての人に健康と福祉を
④質の高い教育をみんなに
⑤ジェンダー平等を実現しよう
⑥安全な水とトイレを世界中に
⑦エネルギーをみんなに そしてクリーンに
⑧働きがいも経済成長も
⑨産業と技術革新の基盤をつくろう
⑩人や国の不平等をなくそう
⑪住み続けられるまちづくりを
⑫つくる責任 かう責任
⑬気候変動に具体的な対策を
⑭海の豊かさを守ろう
⑮陸の豊かさを守ろう
⑯平和と公正を全ての人に
⑰パートナーシップで目標を達成しよう
これら17の目標は主に5つの『P』に分類されるとされています。
People|人間⇒①~⑥
Prosperity|豊かさ⇒⑦~⑪
Planet|地球⇒⑫~⑮
Peace|平和⇒⑯
Partnership|パートナーシップ⇒⑰
さらにこの17の目標ゴールは、より具体的に169のターゲットが示されています。
SDGs 5つの特徴
国連は、SDGsの特徴を5つ提示しています。
普遍性
『すべての人が同じ目標を共有し、行動する』
実は、SDGsにはその先駆けとなった目標があります。
2000年に採択された「MDGs(ミレニアム開発目標)」がそれにあたります。
MDGsは、開発途上地域における課題について2015年までに達成すべき目標として8つ設定されました。
貧困や飢餓、教育、医療など成果が上がった部分もありましたが、目標を達成できなかった部分や、ますます表面化してくる問題も増えるといった状況でした。
次の対策として生まれたSDGsは、、先進国・発展途上国を問わず、同じ目標に取り組めるようになっているのが大きな特徴です。
包摂性
『誰一人置き去りにしない』
一定の人間や環環境は例外として目標の対象にならない、という事態をなくしていくという価値観です。
例外なくすべての人を対象に意識を向けるとして姿勢を指しています。
参画型
『全てのステークホルダーが役割を持つ』
ステークスホルダーとは、一般的にはビジネス用語で、企業が組織活動を行うことで影響を受ける利害関係のことです。
顧客、従業員、株主、取引先、地域住民など、企業活動を行う上で関わる全ての人や組織がそれにあたります。
SDGsは、国や、地方自治体、大企業などだけで達成できるものではなく、一般市民という一人ひとりにも役割があり、目標に向けて行動する必要があることを示しています。
統合性
『社会・経済・環境は不可分であり、統合的に取り組む』
世界の抱えているそれぞれの問題は、氷山の一角であり、見えない部分で関係しあっています。
根本かの解決を目指すためにも、それぞれ独立した対処療法のような対策は、また新たな氷山が出現しかねません。
SDGsの17の目標に取り組む際は、1つのアクションで複数の目標を同時に取り組んでいけるものにすべきです。
透明性
『モニタリングにより進捗を確認しながら進める』
SDGsは法的な拘束力はない代わりに、各国の成果検証を行うための「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」が年に1度開催されます。
これにより、各国それぞれに異なる重点目標や達成度の検証、達成への過程のフォローアップが行われます。
各国の進捗状況はそれぞれ数値化・公開されるようになっています。
2022年6月に発表されたSustainable Development Report 2022において、日本の達成順位は世界第19位となっています。
企業がSDGsに取り組むメリット
SDGsは、国だけでなく、企業も当事者意識を持って取り組む必要があります。
取り組むにあたっては、企業にとってのメリットがあるのも事実です。
既存事業の発展・新規事業の創出
先述したように、SDGsは全世界から需要がある市場です。
SDGsの目標に取り組むことは、現在企業が抱えている課題にも共通する部分も多くあります。
これらの課題を乗り越えることは、企業の発展や、新たな事業開拓に繋がることでしょう。
2017年にビジネスと持続可能な開発委員会が発行した報告書では、SDGsを追求することで膨大な市場機会と雇用を創出するためのシュミレーションが示されています。
その報告によると、2030年までに毎年12億米ドルの新たな市場機会と、3億8000万以上の雇用創出が可能と算出されています。
製品・サービスの付加価値がつく
SDGsを意識した製品やサービスは、他企業の製品サービスとの差別化に繋がります。
環境に配慮するために〇〇が使われている
製造過程で〇〇のように工夫されている
現在の製品に新たな付加価値がつくことで、さらに注目を浴びやすく、消費者に届きやすくなります。
将来的な売り上げに繋がると言えます。
資金調達がしやすくなる
金融業界が投資先として「ESG」に対する評価も重要になってきていることは先述した通りです。
ESGを考える上で重要となるSDGsへの取り組みが企業の評価として重要視されていきます。
金融業界からの評価が高くなり投資対象として評価されることが出来れば融資の際にも有利になることが予想されます。
まとめ
SDGsは世界規模で達成すべき17の目標のことです。
日本においても課題があり、国などの多きな組織のみが取り組めば達成できるものではありません。
一人ひとりや各企業などが当事者意識を持って取り組まなくてはいけません。
SDGsに取り組むことは世界規模で多きな市場が生まれ発展していくことにも繋がります。
企業が取り組むメリットも多きく、より発展していくためにも企業が抱える課題に今こそ取り組む時期ともいえるのではないでしょうか。
参考
持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割 外務省
SUSTAINABLE DEVELOPEMENT REPORT 2022|Sustainable Development Report(PDF)